糖尿病
今回は糖尿病について説明したいと思います。糖尿病と聞いてみなさんは何を思い浮かべるでしょうか?
おしっこに糖が出る病気?血糖値が高くなるの?糖尿病になるとなんでいけないの?糖尿病の治療って何をするの?色々と疑問に思われるのではないでしょうか。
糖尿病の歴史は古く、紀元前1500年頃のギリシャでは糖尿病の記載があるようです。日本では藤原道真が記録に残る日本最古の糖尿病患者と考えられています。糖尿病は長らく不治の病ではありましたが、1921年にインスリンが発見されると、治療が劇的に発展するようになりました。しかし完全に治る病気ではないため、今もたくさんの方が糖尿病の治療を受けています。
そもそも糖尿病とはどんな病気なのでしょうか。簡単に言うと、血糖値が高い状態が続いてしまっている状態のことを指します。血糖値が高くなってしまう理由は色々とあります。
まず糖尿病には大きく分けて1型と2型に分類されます。1型糖尿病は主に自己免疫により膵臓がやられてしまいインスリンが不足する状態を指します。生活習慣病としての糖尿病は主に2型であり、今回は2型糖尿病について説明します。
最初の疑問ですが、なぜ血糖値が高くなってしまうのでしょうか。本来からだには血糖値を一定に保つ機能が備わっています。食事をすると糖分が腸管から血液中に吸収され、血糖値が上昇します。すると膵臓からインスリンが分泌されます。インスリンによって血液中の糖分は筋肉などの細胞に取り込まれ、血糖値は低下します。
しかし、インスリンの分泌が低下してしまう(インスリンの量が少ない)、あるいはインスリンの効果が低下してしまう(インスリンの働きが悪い)とどうなるでしょう。血液中の糖分は細胞内に取り込まれなくなり、血糖値が上昇したままになります。これが糖尿病なのです。
さて、糖尿病の症状としては口渇、多飲、多尿と言われていますが、実は血糖値が少し高い位では自覚症状はほとんどありません。そのため自覚症状なく健診でたまたま見つかったと言う人も多い病気なのです。上記のような症状が出ている場合にはかなり進行していると言ってもいいでしょう。
それでは糖尿病になると何がいけないのでしょうか。合併症によって生活に支障が出たり、さらには命に関わることがあるからです。血糖値が高い状態が続くと、血管にダメージが蓄積されます。すると徐々に血管が硬くなる動脈硬化が進行し、脳卒中や心筋梗塞など命に関わる病気を起こしてしまうのです。また、血管は全身に張りめぐらされているので、全身の臓器に悪影響が出てしまいます。糖尿病の合併症として、神経障害、眼(網膜症) 、腎臓病が三大合併症として有名です。頭文字をとって「しめじ」と覚えてください。神経障害は手や足の感覚が鈍り、痺れや足に膜が張ったような感じを訴える人もいます。網膜症は網膜にある毛細血管が痛んでしまい、網膜に障害が出る病気です。進行した場合には失明の恐れもあるので、糖尿病と診断されたら症状が無くても眼科を受診しましょう。腎臓にも血管がたくさん走っており、その血管が障害されると腎臓の機能が落ちてしまいます。腎臓は体内の老廃物を排出したり、電解質の調節をしたりと非常に大切な機能があります。腎臓病が進むと最終的に人工透析が必要となってしまいます。
これらの合併症を予防するために血糖値を適切な状態に保つ必要があるのです。
続いて糖尿病の治療法について説明します。まず大事なのは生活習慣の改善です。不規則な生活、運動不足、過度な食事・間食、肥満、強いストレスなどが糖尿病を悪化させる要因です。生活リズムを見直し、適度な運動を心がけ、間食を控え、減量などから治療を開始します。次に薬物療法を行います。薬物療法には大きく分けて内服治療と注射による治療があります。近年、内服薬もいろいろな種類の薬剤が出てきており、患者さんの状態に合わせて処方されます。近年登場したSGLT2阻害薬という薬は、腎臓で糖の再吸収を抑制し、尿中に糖を排泄させて血糖値を下げる薬ですが、心不全の悪化を防ぐ効果などもあるとされ、注目されています。注射による治療にはインスリンの自己注射とGLP-1作動薬の自己注射があります。また最近ではインスリンの持続皮下注療法(インスリンポンプ療法)などもあります。
インスリン注射療法に対しては、最終手段というイメージをお持ちの方もいらっしゃいます。しかし、むしろ早期にインスリン治療を導入することで自身の膵臓を休ませ、インスリンを減量・中止することができ、内服治療のみで良好なコントロールが可能となる人も多いので、以前よりもインスリン治療の敷居は低くなっています。
GLP-1とは、膵臓に働きかけてインスリンを分泌させるホルモンです。血糖値が上昇したときにだけ働くと言われており、GLP-1作動薬単独で使用する場合には低血糖などの副作用が少ないと言われています。また、他の薬剤では体重が増加することが多いとされていますが、GLP-1作動薬は体重変化が少ないと言われています。
このように治療法についても次々と新しい薬が開発されており、治療の幅が広がっています。それぞれの患者さんの状態に応じて適切な治療が可能になってきています。
いかがでしょうか。糖尿病についてご理解ができたでしょうか。もちろん、ここには書ききれないこともありますので、わからないことがあれば、かかりつけの先生にも聞いてみてください。