睡眠時無呼吸症候群
・日中ひどい眠気に襲われる。
・朝の目覚めがスッキリしない。寝たのにだるい、頭痛がする。
・いびきをよくかく。睡眠中に呼吸が止まっていると言われたことがある。
・夜間トイレによく起きる。
こんな症状はありませんか?これらの症状に心当たりがある人は、睡眠時無呼吸症候群が隠れている可能性があります。
【睡眠時無呼吸症候群とは?】
睡眠時無呼吸症候群とは、寝ている間に呼吸が止まってしまう病気の総称です。寝ている間に呼吸が止まってしまうなんて、滅多にない病気だと思っていませんか?実は100人に2、3人はかかっていると言われており、意外と多い病気なのです。しかし寝ている間のことなので本人も自覚しておらず、そのため医療機関に受診せず見過ごされている可能性があるのです。また呼吸が止まっていると指摘されていても、病気だとは考えずに放置している人もいるようです。しかし、心疾患や脳卒中など命に関わる病気のリスクが高くなってしまうので、適切な対処が必要な怖い病気なのです。
ただし、適切な治療を行えば、心疾患や脳卒中などのリスクを正常な人と同じくらいまで減らすことができることがわかっていますので、早期に診断し、適切な治療が非常に重要になります。
【2種類に分けられる】
原因によって中枢性と閉塞性の二つに分類されます。閉塞性の方が多く見られます。
〔中枢性〕:呼吸中枢の障害により呼吸が止まってしまう。脳梗塞後、心肺蘇生後など。
脳梗塞の後遺症や心停止によって一時的に脳に血液が送られず脳障害が残ってしまった場合などに、呼吸が止まってしまうことがあります。
〔閉塞性〕:気道が閉塞し、呼吸が止まってしまう。肥満や小顎症など。
肥満や顎が小さいと横になった時に舌が下がり気道を塞いでしまい、呼吸が止まってしまいます。小児でも扁桃肥大などがあると気道閉塞を来たし、無呼吸となることがあります。成長とともに改善する場合が多いのですが、症状が強い場合には手術が必要になることがあります。
【なぜ心疾患や脳卒中が増えるのか?】
睡眠時無呼吸症候群はなぜ心臓や脳に悪影響が出るのでしょうか。それを理解するためには、自律神経について知っておく必要があります。自律神経にはリラックスした時に優位になる副交感神経と、緊張状態などで優位になる交感神経に分かれます。寝ている時はリラックスした状態なので、副交感神経が優位になっています。しかし呼吸が止まってしまうと、体は急激に酸素不足になります。脳は緊急事態と判断し、交感神経が優位になり緊張状態となります。体は休んでいるのに、脳は興奮して起きている状態になってしまいます。そんな状態では脳は休まらないので、日中に眠気が残る、目覚めがスッキリしないなどの症状が出てしまいます。また、交感神経が優位になると、血圧が上昇したり、不整脈が出たり、血糖値が上昇したりするので、高血圧、不整脈、糖尿病の要因にもなっていると考えられているのです。
さらに放置しておくと、血管の動脈硬化が進んでしまいます。動脈硬化が進むと心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こします。そのため睡眠時無呼吸症候群の人は、正常な人に比べ心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが4、5倍に増えてしまうのです。しかし適切な治療を行えば、正常な方と同等までリスクを減らすことができます。
【検査方法は?】
睡眠時無呼吸症候群を疑ったら、当院ではご自宅でできる簡単な検査を行います。寝ている時に、鼻と指にセンサーをつけていただき、呼吸の状態と血中酸素濃度を測定します。二晩装着していただき、重症度を判断します。さらに精密検査が必要な場合には、入院検査が可能な施設へ紹介いたします。精密検査はポリソムノグラフィという検査で、酸素濃度や呼吸状態に加え脳波などを測定し重症度を判定します。重症度は無呼吸低呼吸指数(AHI)で決まります。AHIが5以上で睡眠時無呼吸症候群の診断となり、5から15で軽症、15から30で中等症、30以上で重症と分類されます。
【治療法は?】
治療は原因によっても異なりますが、肥満が原因であれば減量を行います。また、マウスピースを装着し下顎を前方にずらすことで気道を確保する方法もあります。またAHIが20以上の場合は、持続陽圧呼吸療法(CPAP)の適応になります。CPAPとは、呼吸が低下した時に、機械で空気を送り込み呼吸を維持する治療法です。当院では患者さんとよく相談し、患者さんにあった適切な治療法を提案させていただきます。
皆さんも、たかがイビキくらいで大袈裟な、とたかを括らず、一度検査を受けることをおススメします。