高血圧
みなさんはご自分の血圧を測定したことがありますか?血圧計は家電量販店でも比較的安価に購入できる時代になり、健康な人でも一度は血圧を測ったことがある方はたくさんいるでしょう。
さて、その血圧ですが、なぜ高いと問題になるのでしょうか?血圧とはその名の通り血管内の血液の圧力です。これが高いと様々な病気の原因となります。代表的なものは脳卒中や心疾患などです。これらの病気は命に関わる大変重い病気です。それを予防するためには、まず血圧を正常に保つということが大事になります。
では、実際に高血圧の人はどのくらいいるのでしょうか?日本には高血圧の人が推定で4300万人もいると言われています。実に人口の3人に1人は血圧が高い可能性があるのです。最新のガイドラインでは高血圧の定義は140/90mmHg以上です。しかし血圧が130/80mmHg以上(高値血圧と定義)でも、脳卒中や心疾患を発症する率が明らかに上昇することから、治療目標は130/80mmHg未満となっています。
治療は、まず減塩や減量、生活習慣の改善などを行います。
1)減塩
食塩に含まれるナトリウムは血液中に取り込まれると、水分を血液中に貯める原因になります。その結果、血液量が増え、血圧が上昇してしまいます。そこで塩分制限を行うことで、血圧を下げる効果が期待できます。もともと日本食には海外の食事と比べて塩分が多く含まれており、1日あたりの塩分摂取量は多いことが知られています。従って、食事に気をつけて減塩を行うことがとても重要です。「減塩の調味料を使用する」、「お味噌汁は具材を多めにして汁は減らす」、「麺類を食べる時には汁は飲まない」、「漬物の量を減らす」などの方法で塩分制限が可能です。
2)減量
体重を減らすことも重要です。肥満の人は血圧を高くしなければ体の隅々まで血液を十分に送り届けられないため、血圧が高くなると考えられていました。しかし、最近では内臓脂肪が血圧を上昇させることが分かってきました。実際に運動によって内臓脂肪を減らしつつ減量すると血圧が下がる方が大勢いらっしゃいます。
3)生活習慣の改善
生活習慣の改善も重要になります。睡眠不足やストレス、喫煙、食生活の乱れ、運動不足などの生活習慣の乱れが悪影響を及ぼします。質の良い睡眠を心がける、ストレスを溜めない、禁煙する、暴飲暴食を避ける、適度な運動を行うことなどが重要です。
4)降圧剤
減塩や減量、生活習慣の改善でも血圧が下がらない場合には、降圧剤を検討します。ただしあまりに血圧が高い場合にはすぐに降圧剤を開始することもあります。
さて、血圧の薬は飲み始めたら一生飲み続けなければならないのでしょうか。一般的には降圧剤で治療中の方は、中止することで血圧は上昇すると考えられますので、内服は続けるべきでしょう。ただし生活習慣の改善などにより血圧が低下し、目標血圧よりも下がりすぎる場合やふらつき、だるさ、眠気などの低血圧が原因と思われる症状が出た場合には降圧薬を減量または中止することもあります。しかし自己判断で中止するのではなく、処方してもらった医師に確認してから減量、中止することが大切です。
また、二次性高血圧といって、他の病気に伴って二次的に血圧が上昇することもあります。その場合には元の病気を治療することで高血圧も改善することがあります。原発性アルドステロン症や褐色細胞腫などの内分泌疾患、腎血管性高血圧などの血管疾患などが挙げられます。そして最近注目されているのが睡眠時無呼吸症候群です。
睡眠時無呼吸症候群とは、就寝中に舌の付け根が落ち込み、気道が閉塞して呼吸が止まってしまう病気です。正常であれば日中は交感神経が優位(緊張した状態)となり、睡眠中は副交感神経が優位(リラックスした状態)となります。しかし睡眠時無呼吸状態となると、睡眠中でも交感神経が優位になってしまいます。目は覚めていないのですが、脳は起きている状態となり、しっかりと休めていない状態です。その結果交感神経が優位となるため、血圧が上昇します。自覚症状は、日中の強い眠気、だるさ、夜間頻尿、集中力の低下などがあります。比較的簡便な検査で診断が可能であり、治療法も確立されていますので、心当たりがある方は一度検査を受けることをお勧めします。
いかがでしょうか、高血圧に対して理解が深められたでしょうか。検診で高血圧を指摘された、家族や親族に血圧が高い人が多い、脳卒中や心疾患の既往がある、このような場合には一度医療機関を受診してみましょう。
まとめ
・140/90mmHg以上は高血圧
・治療目標は130/80mmHg未満
・治療は減塩、減量、生活習慣の改善、降圧剤
・二次性高血圧の場合は原疾患の治療が大切