たかが便秘と侮らないで!循環器専門医が「トイレでのいきみ」に警鐘を鳴らす理由
「最近、お通じが硬くてトイレで踏ん張ることが多い」 「便秘気味だけど、いつものことだから……」
こんにちは。北條医院の北條義明です。
実は、循環器(心臓や血管)の病気を抱えている方にとって、「便秘」は決して軽視できない問題です。なぜ、心臓の医師がお通じの話をするのか。それは、トイレでの「いきみ」が、心臓に想像以上の大きな負担をかけるからです。
今回は、便秘と心臓疾患の意外な関係と、注意点についてお話しします。
1. 「トイレでいきむ」と血圧が乱高下!
便秘で強く「いきむ」と、お腹の中に強い圧力がかかります。 このとき、体の中では以下のような激しい変化が起きています。
- 血圧の急上昇: いきんだ瞬間に血圧が急激に上がり、心臓に強い負荷がかかります。
- 脈拍の変動: いきんだ後、息を吐いた瞬間に今度は血圧が急降下し、脈拍が乱れやすくなります。
この血圧の乱高下が、心不全の悪化や、心筋梗塞、不整脈の引き金になることが少なくありません。冬場の寒いトイレで、いきんだ瞬間に倒れてしまう……というケースは、実はこうしたメカニズムが関係しています。
2. 便秘は「血管の健康」の大敵です
近年の研究では、慢性的な便秘がある人は、そうでない人に比べて心血管疾患(心臓病や脳卒中)のリスクが高いという報告もあります。
肝臓はコレステロールを原料にして「胆汁」という消化液を作ります。便秘で便が腸に長く留まると、体は捨てたはずの胆汁を無理やり再吸収してしまいます。すると、肝臓がコレステロールを消費してくれなくなり、結果として血液中に悪玉コレステロールが増えて血管が硬くなってしまうのです。
3. 当院でのアプローチ:心臓を守るための便秘治療
当院では、高血圧や心不全の治療の一環として、便秘の改善にも力を入れています。
- 薬剤を使った治療:昔から使われている比較的安全な薬剤から、最近は胆汁酸の再吸収を抑制して自然な排便を得るようなタイプの薬剤など種類も豊富になってきています。その方にあった薬剤を選択します。
- トータルケア: 水分の取り方(心不全の方は制限がある場合もあるため注意が必要です)や、食事のアドバイスなど、循環器専門医の視点から一人ひとりに合った指導を行います。
おわりに
「お通じの相談で内科に行くのは恥ずかしい」と思われる必要はありません。 特に血圧のお薬を飲んでいる方や、心臓に持病がある方にとって、スムーズな排便は立派な「治療」の一つです。
「最近、トイレで踏ん張ることが増えたな」と感じたら、ぜひ次回の診察時に教えてください。心臓を守るために、一緒にお腹の調子も整えていきましょう。
